営業所の審査について
福岡県知事許可では申請書に記載された事項に関する事実関係確認のため、調査員が出向き申請者の事業所にて営業所調査が実施されていました。調査に実施の主な目的は、ペーパーカンパニー等、不良不適格業者の事前排除にありました。
このような重要な審査項目である営業所調査ですが、現在は基本的には実施されていません。その代わりに「営業所の写真」を提出することになりました。現地を訪問して調査されていたことが写真の提出でよくなった訳ですから要件が緩和されたように思う方もいらっしゃるかもしれませんが、建設業許可に必要な営業所の要件自体は変わりありません。申請時の調査はなくなりましたが、抜き打ちでの調査は不定期とはいえ実施されるようなので、許可取得後も問題にならないようにむしろ申請時はもちろん許可取得後も常に営業所の要件を注視しておく必要があります。
目次
営業所の要件
営業所とは常時建設工事の請負契約を締結する事務所のことです。一般的にいう企業の本支店を問いません。営業所の実務としては、見積り、入札、契約事務等の建設工事の請負契約の締結に伴う実体的な行為を行います。
それでは建設業許可での営業所とはどのようなものか具体的に要件を確認していきます。その要件は下記のようになります。
- 本店(主たる営業所)の場合、経営業務の管理責任者、営業所技術者等(旧専任技術者)が常勤する事務所であること。
- 本店以外の営業所(従たる営業所)の場合、建設業法施行令第3条に規定する使用人、営業所技術者等(旧専任技術者)が常勤する事務所であること。
- 使用営業所の権原(自己所有の建物か、賃貸借契約等を結んでいること)を有しており、建設工事の請負契約締結等の業務を行うことができる独立した事務所(他法人、他の個人事業主や個人の生活部分からの独立性が保たれる必要がある)であること。
- 事務所としての形態(固定電話、机、各種事務台帳等の保管スペース等)があること。
- 許可を受けた建設業者にあっては、本店、支店の営業所の公衆の見やすい場所に建設業法に基づく標識を掲げていること。
- 法令の遵守。事業を行うにあたって法令を遵守することは当たり前のことですが、建設業許可を営む営業所として適切な事務管理・労働環境の整備が必要となります。
1.2.については、許可の要件のところで解説いたしました。5.については、許可後の手続きのところで解説します。
ここで重点的に解説しておきたいのは3.4.6.についてです。
使用営業所の権原
使用営業所の権原は、自己所有の建物か、賃貸借契約等を結んでいることが条件となります。
まず、自己所有という場合は申請者が個人事業主であれば当然に個人事業主名義の建物ということになりますので建物についての登記済証や納税証明書等で確認してください。分譲マンション等の区分所有権の場合は、管理組合等の同意を得る必要があります。
次に法人の場合ですが、建物の名義が法人名義であれば上記と同様に法人名義の登記済証や納税証明書等で確認します。もし社長個人の名義であれば社長と法人との間で賃貸借契約か使用貸借契約を締結しておく必要があります。
同様に賃貸マンション・アパートや借家のように建物所有者との間で賃貸借契約もしくは使用貸借契約を結んでいる場合はその契約書の内容を確認します。この場合の契約書では使用目的として事業用等の記載があれば問題ありませんが居住用となっていると問題があります。居住用で借りた建物を事業用で使えば契約違反に問われることにもなりかねないので建設事業者として継続的に営業を行うことができないと見なされてしまいます。特に新規で申請される際には契約書をもう一度確認されることをお勧めします。
使用営業所の独立性
自己所有であっても賃貸であっても建設工事の請負契約締結等の業務を行うことができる事務スペースを1室以上確保しなければなりません。
ここで気を付けないといかないのが自己所有の居住用の建物の場合、個人の生活部分から切り離された独立性が必要となります。具体的には玄関から他の部屋を通らず直近の一室を事務スペースとして使用するようなイメージです。
- 動線:居住部分や他者の部分を通らず直接事務所に入れるか?
- 間仕切り:居住部分や他者の部分と壁等で区画されているか?(生活感がなく事業専用の場所であること)
- 事務所表示:入口に事務所名の表札や案内板があるか?
事務所としての形態について
少数人数で事業活動を行っている場合、ほとんど事務所いることもなく取引先との打合せも携帯電話で行っている方も多いと思います。このような事業者の方でも建設業許可を受けるにあたって固定電話、机、各種事務台帳等の保管スペース等を確保)する必要があります。建設事業者として継続的に事業を行うことを問われていますので、契約の締結から工事後も継続してフォローする体制が整っていることが重視されています。
- 外部から来客を受け、見積・入札・契約締結などの実務を行える準備ができているか?
- 営業所の入口が、外部から誰でも迷わず安全に出入りできる構造になっているか?
- 事務所として社会通念上必要な設備・備品(机、固定電話、台帳等)が備わっているか?
法令の遵守について
福岡県では許可申請の際に下記の項目について確認を求められます。- 建設業法第40条の3に基づく帳簿の備付け・保全及び営業に関する図書の保存を遵守しているか。
- 労働安全衛生法(事務所衛生基準規則)を遵守しているか。
- 建築基準法に適合する建物であるか(特にプレハブ・コンテナ等を設置する場合は注意)。
建設業法第40条の3に基づく帳簿の備付け等について
建設業法第40条の3に基づく帳簿の備付け・保全及び営業に関する図書の保存については許可後の手続きのところで詳しく解説します。こちらを参照ください。
労働安全衛生法(事務所衛生基準規則)
「事務所衛生基準規則」とは、労働安全衛生法に基づき、事務所の労働者の安全と健康を確保するための厚生労働省令です。この規則では、事務室の環境(気積、換気、照度、温度、湿度、騒音、振動など)の管理、清潔の保持、飲料水の供給、休憩・休養のための設備の設置、救急用具の備え付けなどについて具体的な基準を定めています。
◆事務所衛生基準(参考)
- 照明:事務作業で概ね300ルクス以上が目安
- 床面積:労働者一人あたり3.8㎡以上が目安
- 温度:10℃以上(目安として18?28℃の範囲で快適さを確保)
- 換気:窓等の開口部が床面積の20分の1以上、または換気設備を設置
- トイレ:従業員数に応じた適切な設備(男女の区別等)
建築基準法に適合する建物
プレハブやコンテナ等を事務所として使用する場合、建築基準法上の取扱いや建築確認が必要になることがあります。設置形態によっては、別途確認が必要です。
営業所の写真について
営業所調査の代わりに申請の際に営業所の写真を提出するようになりました。
撮影方法は「建設業許可申請時等の営業所写真の提出について」が令和7年10月改訂され、福岡県庁のホームページで詳しく解説されています。提出する写真について細かな指示がありますので確認しておいてください。→福岡県庁のホームページ
●建設業の許可票(新規申請の場合は不要)
標識の記載内容が判読できるように接近して撮影してください。
現在有効な許可番号及び許可年月日を確認して修正が必要な場合は、テープ等を貼って修正してください。
よくわかる建設業許可申請の手引き(福岡版)許可後の手続きへ続く
まずは、お気軽にお問い合わせください!
出典(参照元):添付ファイル「建設業許可申請 営業所写真貼り付け台紙」(資料を元にWeb表示用に再構成・文章を調整)。
